2025/05/31 学部・学科
2025年5月23日(金)、札幌国際大学スポーツ人間学部スポーツビジネス学科の講義「スポーツビジネス論Ⅱ」(担当:田子大地 准教授)において、北海道コンサドーレ札幌の元代表取締役ゼネラルマネージャー・三上大勝(みかみ・ひろかつ)氏をゲストスピーチにお迎えし、アジア戦略についてご講演いただきました。
講義のテーマは「アジア戦略」。三上氏は、長年にわたりクラブのチーム編成と経営の中枢を担い、特に東南アジア市場へのアプローチにおいて先進的な取り組みを進めてきました。今回の講義では、ベトナム、インドネシア、タイといったASEAN諸国との選手契約やマーケティング展開の背景、狙い、そしてその実際の効果について、豊富な実例を交えながら詳しく解説してくれました。
三上氏は、現役選手としての引退を経てクラブ経営に携わるようになった経緯や、当時の自身の学生生活を振り返り、「自分のありたい姿を言語化し、主体的に行動すること」の大切さを学生たちに語りました。これは、プロスポーツクラブの運営に携わるうえでの原点ともいえる気づきであり、受講した学生たちにとっても、自身のキャリアを考えるうえでの貴重なメッセージとなりました。
アジア戦略の出発点は、ベトナムの国民的英雄レ・コン・ビン選手との契約といいます。
当時GMだった三上氏は、単なる戦力強化にとどまらず、「北海道を元気にする」という理念のもと、東南アジアとの懸け橋となる構想を描いていました。文化や言語の壁を乗り越え、クラブと地域が一体となって選手を迎え入れたことで契約が実現し、プロモーション活動によって「札幌」の知名度も大きく向上。ベトナムではビールの「サッポロ」から観光地としての「札幌」へとイメージが変わるなど、札幌のシティプロモーションにもつながりました。
その後もインドネシア代表ステファノ選手やSNSフォロワー470万人を誇るイルファン選手との契約を通じて、北海道産品や観光地の魅力を東南アジアに発信。スポーツと地域産業の連携が進みました。
そして、アジア戦略の“完成形”とされるのがタイ代表チャナティップ選手の獲得です。2017年の契約以降、タイ国内でのクラブの知名度は急上昇。街にはユニフォーム姿のファンが増え、スポンサーや政府関係者との交流も広がり、ビジネスと行政の両面で大きな成果を生み出しましたとのことでした。
今回の講義は、クラブ経営の第一線で活躍してきた実務家から、実際の戦略立案・実行プロセスを直接学べる貴重な機会となりました。本学ではこれまでもオリンピアンやプロスポーツ関係者、スポーツ庁長官(当時)の室伏広治氏などを招き、現場と連携した実践的な教育を展開してきました。今後もスポーツ業界の最前線とつながる多様な学びの場を提供し、次代を担う人材の育成に取り組んでまいります。