2022/03/22 学部・学科

コクサイ心理Vol.6発行について

今年度最終号のコクサイ心理になります。国際大の臨床心理の先生方へのインタビュー特集の最後は、佐々木淑子先生と高野創子先生です。佐々木先生は永らく本学にお勤めされ、この3月をもってご退職されます。心理学科の立ち上げに関わっていただき、また大学院でも様々な教科を担当されました。佐々木先生ご発案の「朗読の集い」も今年で10回目を迎えました。数多くのご指導を本当にありがとうございました。

佐々木淑子先生へのインタビュー

Q1 なぜ臨床心理の教授になろうと思ったのですか?

A1 本学心理学科の先生として仕事を始めたのは、ちょうど20年前の2002年4月からです。本学心理学科開設の2001年4月の前年近辺に、初代の心理学科長を務められた川俣甲子夫先生から、心の時代に応えられる心理学科を創り上げていくために協力してほしいと誘われました。川俣先生とは同じ大学の同期生で、20歳頃からの旧知の仲間と、数十年を経て一緒に取り組めることに惹かれました。その奥にある本音は、学校の先生をしていた亡き母が、私が先生になると知ったら、喜んでくれるのではと思ったことかも?

Q2 心理学の面白さ・魅力は何だと思いますか?

A2 ウイニコットの某著書中に「concern」という章があります。「concern」という言葉が好きです。そのまま訳すと、“人に興味を抱く”とか“関心を持ちながら関わっていく”という意味合いでしょうか。それをある有名な先生が「思い遣り」と訳したことに、すごく納得がいきました。心理学は、見え難い人の心を理解しようとするための学問ですが、そのことに心を砕くことが、その人を思い遣ることになるのか!と発見できた時など、面白いと思います。

Q3 「朗読の集い」について紹介していただけますか?

A3 本年度で第10回目を終えました。今のような音楽と朗読のコラボによる生ライブ+朗読作品を心理学的視点から解説する形になったのは、第4回目あたりからです。卒業生の皆さんが1年生の時には、「災害を超えて」と題して、世界共通言語の「ツナミ」の源である「生神(小泉八雲作)」などを取り上げ、種々の災害に見舞われた平成を振り返りました。「学びの技法」で災害時の心のケアに関する事前学習を経た後、臨場感溢れる生ライブ鑑賞と共に社会の様々な出来事を心理学の視点から味わった事を思い出して下されば幸いです。

※写真は2021年12月に行われた朗読の集い
スタッフ集合写真 前列中央:朗読の山口成子先生 左隣:佐々木淑子先生

高野創子先生にインタビュー

Q1 なぜ臨床心理の先生になろうと思ったのですか?

A1 とても難しい質問です。というのも、自分の人生で置かれている状況によって、振り返るたびに理由が違うように思うからです。例えば、私が高校生の時に「羊たちの沈黙」という映画が流行っていました。主人公に憧れてFBI心理捜査官になろうと思ったことが心理学の世界に入ったきっかけだと自分で思っていた時期がありましたが、今振り返るとその映画に興味を持ったのも自分自身が当時生きづらさを抱えていたからなのかなと思ったりします。

Q2 心理学の面白さ・魅力は何だと思いますか?

A2 心はいつも不確かで、思い通りにならない側面があります。カウンセリングに訪れる人々は、「心が病んでいる人」とか「おかしい人」ではなく、そうした心の不確かさや思い通りにならない想い、人生を抱えながらも懸命に生きようとする人々がほとんどです。もちろん私も例外ではありません。だからこそ私はそうした人々と一緒に、もがきながらも生きようとする営みである臨床心理学が好きなんじゃないかなと思います。

Q3 「心理学的支援法」の授業について紹介してください。

A3 2年生を対象とした臨床心理学の基礎科目で、心の支援の視点や発想について学びます。例えば、「なぜ生きなければならないのか」という悩みを抱えたとき、その答えは人それぞれ異なります。つまり「悩み」には一つの正しい答えがあるわけではなく、その人にとっての答え、すなわち「個人にとっての意味」が大事になります。こうした発想をグループディスカッションを交えながら仲間と学びます。

卒業式 2022年3月15日

世界的なパンデミックに見舞われたこの2年間、卒業するみなさんは、大切な学生時代の多くを自宅待機及び遠隔授業で過ごすことになりました。しかし、コロナ禍でも勉学はもちろん就職活動に励み、進学含めての進路を決めた皆さん、この苦しかった中での頑張りはいつか報われることが来るでしょう。我々教員一同、卒業生の皆さんの行く先に幸あれと願っております。

編集後記
今回のコクサイ心理は、春休み中でしたので橋本が製作しました。はからずも、発行のタイミングが佐々木先生のご退職と重なりました。本学心理学科への多大なるご貢献があり、このように学生が生き生きしている学科が今日まで継続できているのは、本当に先生のお力あってのことだと思います。ありがとうございました。  
さて、今年度のコクサイ心理は6号で完結です。先生方へのインタビューシリーズもいったん終了しますが、
来年2022年度はまた別の企画で臨床心理専攻の魅力をお伝えする予定です。乞う、ご期待を!  橋本

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