社会人教養楽部

成り立ち・これまでの取り組み

音楽療育の成り立ちと当初の取り組みを掲載しています。


本取組の概要

本取組の概要図

本取組は、インクルージョンの理念のもと障がい児・者の特別支援や家族支援のための取組として9年目を迎える音楽療育ワークショップを、幼児教育保育学科の学生の実習やボランティア活動の場として位置づけ、現代の多様化する保育現場や特別支援教育、子育て支援にも対応できる保育者としての資質向上と実践力を養うことを目的としています。

この取組の特色は、音楽療育ワークショップが8年間の実績にのっとり幼児教育や各種福祉現場で求められている専門知識や実践力を培うための場であり、学科が目指す質の高い保育者養成の重要な役目を果たしているという点です。

毎年約150組の親子の登録があるこの取組は学内施設を会場に展開することにより地域へのネットワークを持ち、現任教育としての「保育音楽療育士」養成にも広がりを見せています。

今後も学科に留まらず全学に接点を持ち実践力のある心豊かな保育者養成、人間形成のためさらなる追究を重ねていきます。


本取組の実施プロセス

(1) 特別支援教育と保育音楽療育

近年、幼稚園や保育所などの保育現場において、発達が気になる子どもやこれに悩む親の存在が注目されるようになってきました。地域の幼稚園や保育園の要請は多様な対応のできる保育者であり、本学もこれに応える保育者養成を展開しています。学齢期の児童においては、特別支援教育の取組が徐々に進み成果をあげつつありますが、保育の場においてはまだ各園の自己努力に任されています。そのような気になる子、あるいは障がいの疑いのある子に対する対応については、これまでの保育者の基礎レベルだけでは十分にできない面があります。通常そのような子どもに対する対応は、保育の現場で実際に子どもを担任して初めて問題意識を持つことになるようです。

本取組の中心となっている音楽療育は、保育に音楽を利用することで健常児はもちろん障がい児の療育としてより良い効果を期待する取組です。 親子ワークショップの参加を通して学生は障がいのある、あるいは障がいの疑いのある子どもへの様々な対応の方法を学び、その親との関わりを通し異世代コミュニケーション能力を養います。専攻科の学生においては、学び得た専門的な学習を体現する場として、人間的成長を育み専門職としてさらなる実践力を高めることが可能な貴重な実習の場となっています。

(2)本取組のなりたち

本取組の柱である保育音楽療育の活動は1999年に北海道において結成された「北海道ミュージックムーブメントセラピー研究会(通称MMT)」が始まりで、月例会参加の保護者からの要望に応える形で研究活動の一環として生まれた取組です。

この活動は、障がい(自閉症・アスペルガー症候群・ダウン症・知的障害・ADHD・LD・広汎性発達障害など)のある子どもとその親を対象として、各種楽器を用い、体を動かしたり、楽しく歌ったりしながら身体意識を形成し、知覚や社会性を育て「子どもも親もこころを解放・開放し、会場に集うすべての人と笑顔を共有する」という活動です。その兄弟姉妹や健常児の参加も歓迎し、保護者も付き添いの大人も一緒に活動に参加することを積極的に推奨してきました。8年にわたる音楽療育ワークショップ活動は、保育現場に留まらず、施設や医療現場等においても高い評価と効果を得ています。

(3)本取組の発展

2002年には本学専攻科において、道内唯一の「保育音楽療育士」資格取得講座を開講し、すでに実績のあった「音楽療育ワークショップ」を 実習の場として位置づけました。その後2004年には本学科1年の「ボランティア活動」(選択科目:1単位)の実習の場として教育課程に正式に位置づけられました。

「ボランティア活動」を受講する学生の成長が学内外において評価されたことにより、2007年には「ボランティア活動」の科目を中心としながら関連科目との連携をさらに深め、より多くの学生がこの活動に参加できるような体制を構築しました。さらに夏季・冬季休暇の間の開催要望に応え、本学付属幼稚園が取り組んでいる行事「野外あそび」に参加することも計画されました。

毎回平均60名のボランティア学生がその都度提出したアンケートの結果は2005年8月「第64回日本教育学会」にて「保育者を目指す学生 のボランティア活動の効果について」と題して研究発表をし、本取組の教育的意義を示しました。 ①音楽が心にひびくものである ②コミュニケーションの一つとして音楽がある ③障がいへの偏見や不安がなくなっていった ④子どもの素直でダイナミックな表現あそびに接して障がい児・者への見方が変わった、等々が参加学生の変容のポイントとして挙げられます。

また、保護者のアンケート(27名)および懇談会における意見要望のまとめも2006年7月「北海道特別支援教育学会」で発表しました。論文発表、報告書、研究大会(札幌以外に函館と旭川でも開催)、学外講師も含めたセミナー・特別講演、研究発表、ビデオ制作など多くの取組があります。


本取組の特性

本学は、実習と教科学習が車の両輪となり、専門性と人間性を磨き、他者理解や問題解決能力などを身につけた保育者の養成を目指しています。 ボランティア活動には自己実現・社会的存在としての問題意識の啓発・主体性と創造性の涵養などの意義がありますが、学内で定期的・継続的に行うことにより、その効果を高めることができました。

本取組の大きな特徴は、さまざまな職種の専門家がスタッフとして音楽療育を行う場に参加することによって学生の実践的なスキルや特別支援教育に関する知識・視野を広げ、異世代間交流を通してコミュニケーション能力と心を育んでいることです。

より高い教育効果を求めて実施している工夫としては、

①学生の疑問に答える事前事後ミーティング
②個々が次回への課題意識を持って活動ができるようなアンケートの実施
③現代的課題をテーマにした学習会への参加

などがあげられます。

学生たちはワークショップで運営に関わる役割分担があり、責任をもって役割を果たしています。このことは主体性や他者理解力に役立ち、社会 性も養われます。また子どもたちが楽しみにしている「学生ショータイム」や「ミニコンサート」へ参加することで、子どもたちのためにさまざまな音楽遊びを工夫し、企画力・応用力も身についています。何よりも、大学の中に障がい児・者との楽しい交流の場が年間を通してあることで、保育者を目指す学生、社会人受講生、教員、学外の音楽専門スタッフにとっては、子どもや親と笑顔を共有することができる素晴らしい機会となっています。


本取組の組織性 

本取組は幼児教育保育学科の選択科目「ボランティア活動」と「保育音楽療育士」資格取得講座の必修科目「保育音楽療育実習」の実習の場として位置づけられているワークショップ活動を中心として、学生の専門職の資質と実践力の向上と教育者としての人間的成長を目指しています。この取組の経過とともに、学科内外で本成果への期待感が高まり、2004年以降、学科をあげてこれを支援する体制を整えてきました。

(1) 教科間の連携と学部・学科を越えた学生参加

本取組の中心となる「ボランティア活動」の授業については、選択科目にも関わらず60名以上の学生が履修し、単位修得以降も活動に参加している現状があります。活動に関わるスタッフも担当教員、学外専門職教員のほか、学科全教員が専門性を生かす形で、また学生指導の形で関与しています。その取組は次第に広がりを見せ、今年度からは2年次学生の参加が可能になり、他学部他学科との連携をさらに進め、より多くの学生が参加できる体制となりました。

具体的には、保育原理、障害児保育、児童福祉、保育臨床、造形表現、保育実習などの教科との連携をさらに深め、総合生活学科や人文学部心理学科の学生のボランティア受入を含め、セミナーや学外講師による特別講演などへの参加も共同していきます。

(2) 組織的学生指導体制と本取組を支える組織

学科では、学生の育ちの経過を評価する場として、学びの集大成である学外実習を重視しています。学科全教員で取り組む実習巡回指導では、通常の評価票とは別に聞き取りによる学生評価に取り組んでいます。

これは、学科をあげて質の高い保育者養成に取り組むための、本取組から生まれた新たな試みであり、本学学生の育ちにおける優位性を確かめようとするものでもあります。取組全体の組織的共有は定期的な学科会議や学年アドバイザー会議、実習委員会、カリキュラム検討委員会、キャリア支援委員会、教務部においてです。



本取組の有効性

(1)学生に対する有効性

1回目はどのように動いたらよいかわからず子どもへも親へもあまり接点を持たない学生が多くいます。2回目から次回への課題を持たせ、大人への対応に戸惑いは隠せないものの回を重ねるごとに「戸惑いがとてもあった」という学生が皆無で「全くない」が増えています。また回を追うごとに保護者や周りの大人とのコミュニケーションがとれた、と感じる学生が増加している様子がアンケートではっきりと現れました(2005年ボランティア参加学生約60名)。ワークショップにボランティア参加した学生の全員が幼稚園・保育園・施設の実習に役立つ、と思っており、実践に自信を深めた現われと思われます。

保育現場の本学の取組に対する認識も高まり、保育者の「保育音楽療育士」資格取得に理解を示したり、ワークショップに参加させる園も出てき ています。専攻科・保育音楽療育士履修生は実習の場としての貴重な学びを毎回レポート提出し、自分の反省と次回への課題を持ち、より良い子どもへのかかわりと保護者への対応を勉強会やミーティングで確認します。

(2)保護者、付き添いなどの参加者に対する有効性

本取組の有効性は、学生のみならずワークショップの参加者である保護者からも計ることができます。

保護者とスタッフの懇談記録によれば、本取組について①子どもが楽しく遊べる場、②子ども同士やボランティア学生などとふれあえる場、③生の音楽を聞くことができる場、④親の時間的・精神的・金銭的な負担が少ない場であるとの発言が多く、保護者のさらなる要望として、①回数を多く、②時間を長く、③年齢や発達別でのプログラムを期待する声も多くあります。

これは、ワークショップが、登録さえすれば毎回の出席が自由であり、その内容も「子育てサロン的」「地域のレクリェーション」「療育機関セ ラピー」のようだと多様にとらえられており、ワークショップのねらいでもある「親と子の心の解放・開放」が概ね達成されているからだと言えます。先に述べた本取組の学生の有効性は、このような保護者にとっての満足度がその背景にあり、効果をもたらすと考えることができます。

(3)就職への優位性

本学科の就職は1992年度から15年連続で100%の決定率を続けており、全国短期大学女子平均の89.0%(2005年4月厚生労働省)はもちろん、道内の保育者養成校の中でも著しく高い就職率を誇っています。また就職先もほとんどが幼稚園や保育園であり、保育職の比率は93%となっています。

なかでも統合保育を行っている保育所や幼稚園への志望動機として「1年次のボランティアの授業やワークショップのボランティアとして関わったことが自信となっている」との面接発言や履歴書記述が多く、本取組が学生のキャリア支援の一つとしても大きく意味を持つことが確認されています。

(4) 新たな試みに期待される効果

取組の発展でも述べたが「夏季と冬季休暇に是非ワークショップを」(学生の夏・冬休み中はワークショップは開催されない)という要望に対して、札幌国際大学付属幼稚園が、卒園児や小学生など地域の子どもたちと学生ボランティアが自然の中で遊ぶ取組の「野外あそび」に参加させて頂くこととなりました。この活動による健常児との触れ合いは、社会性を培い多様な教育効果を生むことが期待できます。

「保育音楽療育士」資格取得者(37名)が社会に出て5年を経過したが、実践に対する研究の場を、との要望に応え2007年4月「北海道音楽療育研究会」を立ち上げ、定例研究会を行っています。現場での悩みや共通の課題を持ち寄り、より良い対応を求め真摯に研究を継続させるため学内に事務局を設置し、全国の「保育音楽療育士」資格取得者ともパイプをつなぎたいと考えます。


今後の実施計画 

2007年度後期以降も基本的には音楽療育ワークショップを中心とした活動を継続しながらその充実を図ります。1つには学内に活動の拠点として「北海道音楽療育センター」を設置することです。2つ目には学内ネットワークの確立、3つ目には自己点検・評価の徹底です。

(1) 北海道音楽療育センターの設置

記録用機器備品等を充実させ、学生と教員による運営体制を確立し、学生の音楽療育の実践力・企画力を特別講演等の資料作成・整理など多くの事務的な対応や広報活動が可能になる見通しです。

(2)学内ネットワークの確立

2008年4月に新設される本学四年制大学心理学科子ども心理専攻とのボランティア活動や学習会をはじめとした学生の交流により、学科・学 部を超えた学び合いが可能となります。本学科教員による体育・造形あそびや総合生活学科の担当教員による園芸体験などのように今後もネットワーク作りを進めたいと考えます。

(3)自己点検・評価の徹底

まず1つ目には、学生指導について。
2007年度幼児教育保育学科1年目前期選択科目「ボランティア活動」履修学生が1年生全体の3分の2以上を占める105名にのぼりました。音楽療育に対する関心の高さとボランティアへの意欲を示すものと受けとめられますが、一方でワークショップの運営にあたっては参加する親子との人数のバランスや支援のあり方に課題も出てきました。今後、学生への事前事後指導をさらに充実させるとともに学習会やセミナーを通してワークショップに参加する保護者や保育者などとの意見交換の機会を多く設定し自らの学びを整理できるようサポートしていきたいと考えます。

2つ目には地域のニーズに対応する体制の整備です。
札幌近郊に限らず、より広い地域への情報提供を試み、障がい児・者施設や支援団体との相互交流を深めていきたいと考えます。

3つ目には現任教育の充実です。音楽療育ワークショップを中心に広がってきた全ての活動を卒業後にも継続的な学びを保証する場として機能させ、教育効果の確認のために学生の就職先への聞き取り調査やアンケートなどを実施したいと考えます。


参加者の声

ボランティアとして参加して

札幌国際大学短期大学部 幼児教育保育学科2年 近藤可望
音楽療育ワークショップは、障害のある子供たちとのふれあいができる、他にはない場所で、1年生の前期から参加しています。お子さんの様子について保護者の方から聞いた事がとても勉強になり、実習や就職にも活きると思っています。
こどもたちにとって、からだを動かして思い切り遊ぶことが大切なので、学外学習ではワークショップで行っているような表現遊びを取り入れました。自然に笑顔が広がっていきました。
更に学びを深めたいので専攻科進学を目指しています。

「保育音楽療育士」資格取得

札幌国際大学短期大学部 専攻科「保育音楽療育士」資格取得者 早川花枝
幼稚園に4年、保育園に3年勤務しながら、夜間のオープンカレッジ「保育音楽療育士」の資格を取得しました。
現在は専攻科で専門性を高める勉強をしながら、児童デイサービスのスタッフとして障がいをお持ちのお子さんと関わっています。
音楽療育ワークショップに参加して5年目。子供たちとの活動はもちろんのこと、セミナーや「北海道音楽療育研究会」では、同じ資格を持つ仲間たちやバックグラウンドの違うスタッフとの情報交換を行い、毎回大変有意義な時間を過ごしています。

家族で参加して5年

参加保護者 岡嶋真紀
ワークショップに参加するようになり5年が経ちました。私自身幼稚園教師だったこともあり、子供と共に楽しみながら、自分自身スキルアップにもなればと参加したのがきっかけです。
毎回趣向の凝らした遊びが行われ、時には大型紙芝居や生演奏などもあり、参加当初は表情の硬かった娘も、笑顔で参加する場面が多く見られるようになりました。障がいがある子だけではなく、兄弟も親も一緒に参加でき、家族みんなで楽しい時間を共有できる貴重な場となっていますので、このような活動がこれからも続けられるよう願っています。




取り組みに関するリンク